楡 冬眠中

美しかった楡も、すっかり葉を落としました。
それでも、まだ実が残っているので、すずめのおやつになります。
葉の落ちた木々は天敵から丸見えですから、普段はすずめがとまることはありません。
このときは私が天敵を見張りつつ、急いでとまってもらいました。　
各自思い思いの場所に。
きっと、葉が生い茂っているときも、同じ場所にいたのでしょうね＾＾　

今年生まれたすずめには、何もかもが初めての体験です。
すずめの体温は４２度。
そんな母親のお腹にずっと抱かれて、初めての巣立ちでは震え上がったかもしれません。
季節は初夏、私たちには爽やかな気候ですが、雛にとっては一気に２０度くらい寒くなったことでしょう。
この時期の雛は、羽をいっぱいに膨らませてまん丸です。
梅雨が来て、すぐに夏が来て、雛たちには嬉しい暑い季節。
たくさん食べて、学んで、喧嘩して、その間にも小さな兄弟がどんどん増えていきます。
やがて、大きな兄弟たちは、新天地へと旅立ち。
残った兄弟は、まだ、寒いということを知りません。

いつも隠れていた緑の葉が黄色くなりはじめ、ふわふわだった羽が抜けていきます。
痒くて痒くてたまりません。
頭の羽も抜けて、ブルブルっと寒くなりました。
葉が赤くなるころ、いつも一緒にいた子すずめたちの姿が見当たりません。
皆な大人ばかりです。
自分もそうだと気がつくのでしょうか。

冷たい風が吹き荒れて、紅くなった葉が落ちていきます。
この木にはもう隠れられない。
風はどんどん冷たくなっていきます。
でも、へっちゃらです！　
昔よりずっと強くなりました。
新しい木も葉が落ちて、また新しい木に移ります。
本当の大人たちは、これからどうなるのかを知っています。
容易くはありません。
しかし、それを乗り越えれば、花の季節がやってくることも知っています。
子すずめたちは、まだ桜を知りません。
これから先はどうなるのだろう。
食べ物は見つけにくくなり、ますます寒くなって丸くなり、不安でいっぱいなのか、明日のことは心配しないのか。
子すずめたちの、初めての冬が始まりました。